2020/03/28 22:21



▼ ちょうど二十歳くらいのことでした

高校を卒業してから興味本位で織物の世界に入り込みまして。
なんでか何のあても、根拠も無かったけど()、これを仕事にしたいと思いました。
クニヒサエツコは、その時からのコンビです。。。それから30年。

 手織りは紀元前から生きるための衣として、機能だけでなく更にはココロ踊る美しさをも求めるものとして・・・

発展してきたものだから。

世界中で今でも、誰でもやろうと思えばやれる特別ではない技術だと思っています。

 時間がかかる割にはパッと見地味で、映えないのが手織物()

特別じゃない、フツーかもしれない技術のものが劇的に唯一無二と、織っている自分たちを悦ばせてくれるものが『素材力』でして。
この『素材力』による、つくる悦びが無ければきっと、この30年間は存在しなかったとつくづく思うのです。




▼ 30年の道のりに感謝を込めて。夫婦共に50歳になった記念に、50本の半巾帯を作りためよう!

普段は八寸帯地などの制作で出る、残り糸から作られることの多いiwasakiの半巾帯。
数本ずつしか作らないのと、有難いことにiwasakiの半巾を楽しみにしてくださるお客様もあって・・・

10本以上まとめて並べることがまず無かったので。まず自分たちもたくさん並べて見てみたいと。
いつだって自転車操業のiwasakiですから(トホホ)出来るとすぐ「こんなん出来ました~!」ってなってしまって()

 副産物的に生まれるiwasakiの半巾帯ですが。

そもそもiwasakiは、副産物的に生まれた自家織物がテーマの手織り工房です。
養蚕、生糸産業が産業の中心だった明治の頃の、
山間地で農閑期に出荷出来ないくず繭で糸をとって自家用にお婆ちゃんが織ったような。。。

なので、iwasakiの半巾帯はもしかすると一番iwasakiらしい織物です。

それを生糸の輸出で財を成した原三溪の三溪園で『日本の夏じたく』の中で展示できたらと思った次第です。

残念ながら今年の『日本の夏じたく』展は、新型コロナウイルスの影響で開催が中止となりましたが、来年出品出来たらと思っております。


▼ ゴツゴツと節がある、ツヤツヤでピカピカである、ざらっとマットである、シャリシャリと、又はしっとりと・・。

これらは全てiwasakiで用いる絹の特徴です。

長野の宮坂製糸さんや、群馬の碓氷製糸さんで人の手により作り出される特色のある絹糸たちこそiwasakiを支える『素材力』です。

今回はその『半巾50+』から二品を。
どちらも緯吉野(よこよしの)という織り方になります。しっかりとした厚みがあり、安定感のある締め心地です。



写真右のグリーン系のものは、

タテ糸に生糸。ヨコ糸にキビソ糸という、繭から糸をとる際に最初に糸口を見つけるときに出る繊維でつくられた絹糸で。
それこそA級の生糸を作る際の副産物として永くB級とされてきた絹糸ですが、

独特の味わいのある糸で手間がかかるため現在はA級の糸と同じ価値のものとなりました。
タテ糸の生糸は国産生糸を。ヨコ糸には中国産のキビソ糸と、国産のキビソ糸。

それに時間を見つけてエツコが切り糸を繋いだ繋ぎ糸が入っています。
『エコ』とか『リサイクル』とか『地球にやさしい』なんて言葉が存在するとっくに前から自家織物にはちゃーんと

こういった結び糸が大切に、味を更に深めるソースの役割も果たしていて。

それらをリスペクトしているiwasakiではこの30年、ずっと繋ぎ糸を作り続けております。
   素材・絹100
   丈・約4メートル
   染料・天然染料(ヤマモモ)・酸性染料
   税込価格 ¥55,000
   本体価格 ¥50,000
     
写真左のモノトーン系は、

タテヨコともに碓氷製糸さんの『ふい絹』というツヤツヤの無撚りの絹糸を使ったタイプです。
このタイプの糸では、iwasakiの定番の『銀河絹の山形斜文八寸帯地』で使っている、宮坂製糸さんの『銀河シルク』
という糸も同じような技法で作られていますが。

糸の質感がそれぞれ違います。この半巾は、細くて硬めな『ふい絹』でシャープな感じにしてみました。

ヨコには同じく碓氷製糸さんで作られる国産のキビソ糸もポイントに入っています。
   素材・絹100
   丈・約4メートル
   染料・天然染料(ヤマモモ)・酸性染料
   税込価格 ¥66,000
   本体価格 ¥60,000